待ち合わせの空き教室に時間どおり到着した石崎は、の複雑そうな表情を見る前に既に口を開いていた。


「なんだー?恋愛相談か??」


「恋愛相談」という響きに照れてしまったのか、石崎の問いかけには返事をせず、は来てくれたお礼のチョコレートを手渡しながら項垂れた。


「もー。よくわかんないのっ」
「ハラ減ってんだよ、手短に頼むぜー?」
「聞く気あんの?」


サッカー部の練習量にしてみればチョコレートじゃ空腹を満たせないのだろう、しかし真剣に話を始めていたの癪に障ったらしい。ギロリと石崎を睨むと「スマンスマン・・・」と笑って見せた。


「なんかあったのか。」
「・・・特には何もないけど。」
「なんじゃそりゃ。」
「なんていうかさあ、本当に、わたしのこと好きなのかなー、とか。」
「井沢のやつがか?」


頷くを見て、そんなことで呼び出したのか、と言わんばかりのため息をつく。そんな石崎の顔を見ないよう机に体を伏せ彼の言葉を待った。


「・・・お前よー。もっと井沢のこと信用しろよー。」


上半身は体に預けたまま目線だけ上げると苦笑する石崎が見ていたため、は思わず顔ごと机に突っ伏した。


「べつに信用してなくないもん・・」


言葉尻から、の言いたいことはここで終わりではないと感じ、石崎は続きを根気強く待った。


「・・・ただ、メールしかしてなかったのにいきなり電話で告白されて。」
「・・・わたしの何がいいんだって話よ。」
「・・・彼女が欲しかっただけなのかなぁって自信なくなるよ。」


が井沢から告白されたのは3日前だった。しかし電話で「付き合って下さい」と言った井沢に、「お願いします」と答えてから三日間。学校で会うこともなく、ましてやメールを送ることも互いになかった。おそらく二人とも避けてしまってたのだろう。そのことは石崎も雰囲気から感じ取っていた。
彼女の口から不安の種を知れた石崎は、に問いかけた。


「お前こそどうなんだよ」
「え。」
「告白されて、二つ返事でOKして。
 お前こそ本当に井沢のこと好きなのか?」
「付き合うとか初めてだし。告白されて嬉しいけどさ。
 ・・・・恥ずかしくて話せる訳ないじゃん。」
「井沢のこと嫌なのか?」
「す・・好きだもん・・・。」


その言葉を聞いた石崎は「へーえ」と満足そうにニヤケた顔をし、立ち上がるなり教室の外に向かって声を張った。

「だとよー!井沢!」

まさか。驚いて立ち上がったが振り返ると、顔を真っ赤にした井沢がいた。


「お前ら同じことで相談してやんの。
 思ったことは口にしないとな!」


石崎はそう捨て台詞を吐き、ピースサインを作りながらそそくさと教室を出ていってしまった。


取り残された二人とも、立ちすくんだまま床を見つめるだけだった。


(今の話聞かれてたってことだよね・・どうしよう)


お互いに何も言えない空気。沈黙のせいで二人の頬はより一層赤く染まっていく。恐る恐るが視線を上げると、同じタイミングで顔を上げた井沢と目がかち合った。今にも泣いてしまいそうなの表情を見て、ようやく言葉を発したのは井沢だった。
困った顔をした井沢の言葉に思わず笑ってしまい、恥ずかしさでの目に溜まった涙はこぼれ落ちた。




「あ・・・あのさ、って呼んでいい?」


20171109