どういうことだ。下駄箱に、手紙が、入っている。



「はは…」



モテたいモテたい日頃から言ってるせいなのか。ついにこんなにも痛い幻覚を見るようになってしまうなんて。

下駄箱に書かれた俺の名前をもう一度確認する。そして目を戻してみても、そこには変わらず手紙があるのだ。

恐る恐る手紙に触れる。妄想でも、幻覚でもなく、リアルな紙の手触り。
「…まじかよ」

うっすらと桃色のついた封筒に、ゲルインキの黒ペンで「浦辺くんへ」と書かれている。実際そんなことはないのだが、封筒からほんのりと温もりを感じるような心地。何もかもがベタベタの模範ラブレターで妙な雰囲気がしてはいるものの、胸の高鳴りは早まるばかりだ。

今にも体から飛び出してしまいそうな心臓を抑え、封を切る。


女子特有の控えめな字で書かれた文章はごくありがちなものだった。
所々話がそれていて、少し読みにくい、なんて言ったら失礼なんだけれども。

要点をまとめると、初めまして、と、俺のことが好き、と、返事はいつでもいい、部活頑張って、といった内容。あと、最後に書かれたの文字。


~~~


次の日、朝の自主練に来てた奴らに聞いてみれば、は西尾と同じ2年E組だという事が判明した。
おれはB組でやつらとは合同授業も違えば教室の階も違う。

聞いたことの無いような名前だったから、(しかも俺に告白するってことは)きっと救いようのない性格のたらし女か、パッとしないような顔の物好き女か、とりあえず恋人が欲しいなんて思っている女だろう。
振るか付き合うかはまだ考えないとして、一度顔だけ見に行こうと思った。


4時間目の終了チャイムが鳴ってすぐに、めったに足を運ぶことのない三階への階段に急いだ。
A〜C組と、D・E組は二階と三階とで分かれている。三階の廊下は妙によそよそしい。


E組に着き、廊下と通じる教室の窓からまずは西尾を呼ぼうと顔をのぞかせた。



給食を配る支度を始める生徒が忙しなく動く中、俺は一人の女子を見つけた。
もしかするとあいつが…――いや、

 もしかしなくてもあいつだ。

その女子は俺の探しているような容姿をしていたわけではない。
目が 合ったのだ


教室を覗いてすぐに、間の抜けたような、どうしてわかったの、みたいな驚きの隠せない目が、こちらを見たのだ。(おまけにぽかんと開きっぱなしの口元も添えて)

数秒間そのまま時が流れた後、その女は決まりの悪そうに眼球をうろちょろさせた。顔は真っ赤に染まり、口元はとっくに結ばれて唇を噛みしめている。

そして俺が教室内に身を乗り出せば、少しでも距離が欲しいのだろう、隅に固まる女子の集団へ飛び込んでいった。
他クラスに入ってはならないという大友中の可笑しな決まりがあるゆえ、それ以上近づくことができなかった。


給食の時間も五時間目の授業中も帰りの会も、部活の時間でさえも集中なんてできたもんじゃない。
頭に浮かぶのはただ一つ。のことだけ。
気が付けば脳裏には間抜けな顔をしたあのがいる。



やばい、
やばい、

想像してたのよりも全っ然可愛かった。マジで。


20110516